ネスレ日本株式会社「キット、ずっとプロジェクト」

チョコレートブランド「キットカット」が、三陸鉄道とともに沿線地域の復興・活性化に取り組むプロジェクト。寄付金付き商品の販売、桜柄のラッピング列車の運行、草野球チームの結成などで地域を盛り上げている。

ネスレ日本株式会社
コンフェクショナリー事業本部マーケティング部・部長槇 亮次

支援プロジェクトの概要コミュニティ支援

三陸鉄道と協働し、観光振興を中心に沿線地域全体の活性化を目指す「キット、ずっとプロジェクト」を 2012 年春に開始。寄付金付き商品の販売や桜柄のラッピング列車の運行などに取り組み、地域に活力を生んだ。さらに、その一環で三陸鉄道の職員や沿線住民とともに草野球チームを結成。野球によるコミュニティの活性化、また日本一を追いかける姿を通して沿線住民に元気を届けることを目指す。

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  • Q1プロジェクトの概要を教えてください

    三陸鉄道と協働し、観光振興を中心に沿線地域全体の活性化を目指す「キット、ずっとプロジェクト」を 2012 年春に開始。寄付金付き商品の販売や桜柄のラッピング列車の運行などに取り組み、地域に活力を生んだ。さらに、その一環で三陸鉄道の職員や沿線住民とともに草野球チームを結成。野球によるコミュニティの活性化、また日本一を追いかける姿を通して沿線住民に元気を届けることを目指す。

  • Q2プロジェクトはどのように始まりましたか

    ネスレ日本は本社が神戸市にあり、1995 年の阪神淡路大震災ではオフィスが倒壊するなどの大きな被害を受けた。当時、全国からの応援を受けて復活を遂げ、その後「キットカット」は受験生を中心に「がんばる人を応援する」チョコレートブランドとして人気を博すことになった。東日本大震災への復興支援は、ネスレ日本と「キットカット」の事業にとって使命と捉えている。
    震災後は、まず物資支援や寄付の提供などを行う一方で、次第に被災地に長く寄り添うようなプロジェクトを模索するようになった。
    そうした中、ある縁から三陸鉄道の職員と知り合い、震災の数日後に「キット、復旧かなう。」というメッセージとともに、段ボールに詰め込まれた「キットカット」が同社に届いたことを知る。これをきっかけに、三陸鉄道と周辺地域の復興・活性化に向けたプロジェクトを立ち上げることにした。

  • Q3どのような活動を実施しましたか

    2012 年春にスタートした同プロジェクトでは、初年度に 1 袋に 20 円を三陸鉄道の復旧などに充てる寄付金付きの「キットカット」を期間限定で販売したほか、ブランドの Facebook を通じて世界中から集まった応援メッセージとともに、桜柄で彩られたラッピング列車「キット、ずっと号」を運行した。その後も活動は継続し、三陸鉄道の全線が復旧した 2014 年春には、全国から観光客を呼び込むために世界初となる鉄道の切符機能が付いた「キットカット”切符カット”」を販売。このほかにも、様々な活動を展開した。

  • Q4このプロジェクトでこだわったことを教えてください

    1 つには、企業理念とする CSV共通価値の創造の考え方に則って、当初からあくまで「キットカット」のブランドマーケティングの一環と位置付けたことが挙げられる。
    「キットカット」には「がんばる人を応援する」というブランドコンセプトがある。「受験生の応援」に端を発し、過去にも夕張市の財政破綻( 2007 年)や新潟中越沖地震(同)、岩手・宮城内陸地震( 2008 年)の際に寄付金付き商品を販売してきた。今回も被災地支援と同時に、そうしたブランドイメージを強固にすることが、長い目で見れば本業にいい影響を与えると考えている。
    そのため、特別なプロジェクトチームを立ち上げることはせず、マーケティングの一環として「キットカット」の事業部が主体的に企画を考え、活動している。

  • Q5「長期目線」の活動はその後、どのような動きをしましたか

    震災から 3 年が経とうとしていた頃、三陸鉄道とどういった支援活動が必要なのかを一緒に考えた。当時は、支援の主眼がインフラの復旧や産業復興から「クオリティ・オブ・ライフ」(生活の質)の向上へと広がっていた。そうした中、三陸鉄道の駅のある宮古市田老地区にあった田老野球場の惨状を目にした。建設途中で被害を受け、こけら落としが叶わぬままの状態だったのだ。地元で愛されている野球を楽しむ場を奪われた住民たちは、野球を通したコミュニケーションも失ったという。

    「キットカット」は、常々ブランドスローガンとして“ Have a break, have a KitKat ”と掲げている。彼らが失ったのは、肉体的(物理的)なBreak=休憩に留まらず、心の休憩という意味も包含する「キットカット」の Break に他ならないと感じられた。さらに「キットカット」は応援のエールを届ける特別なチョコレートだ。ならば、野球愛好家たちが仲間との Break を取り戻し、発奮し、その熱い気持ちが沿線住民に伝染するような応援企画を立ち上げようと考えた。同時に、震災の風化を防ぐとともに、被災地の復興が将来的な防災・減災活動の啓蒙に繋がると考え、日本、そして世界で話題を呼ぶプロジェクトの企画を心掛けた。
    各界に協力を呼び掛け、 2014 年秋に草野球チーム「三陸鉄道キット Dreams 」を結成。野球による地域のコミュニティ支援に乗り出すことにした。

  • Q6野球チームのメンバーは、どのように集めましたか

    選手は三陸鉄道と一緒に地元の野球愛好家たちのルートを当たり、鉄道職員と沿線住民で構成。同時に、応援に参加してくれる協力者集めも始めた。企画発足の主旨を説明に回る中で、積極的な協力姿勢を見せる人たちに会えたことは幸運であり、この地域における三陸鉄道の信頼や、野球という国民的スポーツが持つ魅力があってこそと考えている。
    監督には山本正徳・宮古市長を迎えるなど、市も全面的に協力してくれた。さらに、オーナーには三陸鉄道の社長、そしてゼネラルマネジャーに米大リーグで活躍する岩隈久志・投手が就任。応援ソングは仙台在住の人気バンド・ Monkey Majik が担当し、球団マスコットキャラクターには地元名産の短角牛にちなみ、人気マンガ「キン肉マン」のバッファローマンが参加。地域で大きな話題を呼んた。各方面から多大なサポートが得られているのは、野球のコンテンツ力とクオリティ・オブ・ライフの向上を目指す本企画への共感が得られたためと捉えている。

  • Q7チームの活動強化のために具体的に行ったことを教えてください

    震災の風化を防ぐことが目的であるため、定期的に話題作りを行っている。2015 年春には草野球の日本一を決定するトーナメント「キット、ずっと杯」を主催した。さらに、チームメンバーが企画・監修した「キットカット」の限定商品を全国で発売し、その売上金の一部を新球場の桜の植樹に寄付した。そうした経緯から、 2016 年春に完成した野球場は「キット、サクラサク野球場」と名付けられた。新球場のこけら落としの日に開催した東北一を決める東北杯で、「三陸鉄道キット Dreams 」は優勝を飾っている。地元メディアにも積極的に取材してもらい、球団の活動は地元で広く知られるようになった。

  • Q8プロジェクトの予算はどのように捻出しましたか

    活動は CSV の一環であることが原理原則だ。そのため、例えば壊れた野球場の修復費用など、単純なハード/ハコモノの整備に寄付や募金は行わなかった。それは CSV の範疇ではないし、本当の意味で継続して続けるためにも、あえて手を出さないと決めた。
    寄付金付き「キットカット」の販売で得た資金は、桜柄のラッピング列車や新球場の桜の植樹など、地域住民を励ましながら「サクラサク」という「キットカット」のブランドイメージの向上につながるような活動に寄付した。
    ある意味では少し距離を置いた考え方ではあるが、多額の寄付で短期的な成果を上げるよりも、長く続けるために必要な考え方だと思う。

  • Q9長く続けている分、社内の関心が低下することはありませんか

    CSR 活動の一環だと、維持するのが難しい面があるだろう。例えば「三陸鉄道の全線復旧」など、復興を象徴するような道のりが描けた時点で、活動の継続を再考する必要性が生じてしまう。CSV の活動として、それがブランド価値の向上につながっていると周囲にアウトプットしていれば、会社としても継続するべきだという判断を下すはずだ。

  • Q10プロジェクトの成果・課題について教えてください

    どの程度の規模で話題になっているかは定量的に目標を設定して検証しているが、継続的な寄付金付き商品の販売や地元メディア、 Web メディアを活用することで無事成果を上げていると考えている。
    また、活動する地域に対しては、プロジェクトに携わってくれた人たちが「なくてはならなかったもの」と感じてくれることが重要と考えている。高く評価してくれている人は少なくない。地域に与える影響についても、強い手応えを感じている。

  • Q11成果や課題を踏まえ今後の展望について教えてください

    東日本大震災の被災地で求められる復興へのサポートを継続するとともに、他地域への減災・防災への啓蒙活動、さらには他被災地への応援活動へとプロジェクトのスコープを広げている。
    実際、昨年には巨大地震に襲われた熊本に応援を届ける活動を実施した。熊本地震の翌週に行われた「キット、サクラサク野球場」の落成式では、来場した方々が「今度は自分たちがエールを返す番だ」と言わんばかりに沢山の応援メッセージや募金を寄せてくれた。その想いに応えるべく、熊本県産の茶を使った「キットカット」を発売し、売上金の一部を寄付。さらに、球団 GM の岩隈氏と協働して現地で少年を対象にした野球大会「キット、ずっと杯」も開催した。その後、台風 10 号の被害に遭った岩泉町岩手県に対しても、チームメンバーの発案により同町名産のヨーグルトの復活を願った寄付金付き「キットカット」を販売した。本品は、コンビニに加えて、岩泉ヨーグルトが販売され人気を博していた全国の温浴施設へも販売ルートを広げ、 CSV の観点でも新たなブランド作りとビジネス開発に繋がった。
    残念なことだが、これからも自然災害は発生するだろう。そして、同時に被災地を救いたいという願いも生まれるはずだ。その願いがある限り、「キットカット」は今後も、「自然災害からの復活に向けてがんばる人を応援する」ブランドであり続ける。

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