公益財団法人トヨタ財団「復興公営住宅におけるコミュニティ形成支援」

復興公営住宅のコミュニティ形成支援に取り組む非営利団体への助成プログラム

公益財団法人トヨタ財団
事務局長・総務部長 大野満

支援プロジェクトの概要コミュニティ支援

宮城を中心に岩手・福島の 3 県で、復興公営住宅のコミュニティ形成に取り組む非営利団体への助成プログラムを展開。単に助成するだけでなく、支援団体の活動で生まれた成果を他の団体や自治体に広く発信・共有することで、別の地域や住宅でも成功事例を導入する流れを生み出した。さらに、復興庁や自治体が類似の補助金制度を設ける契機になるなど、同住宅のコミュニティ支援の裾野を広げる一助となった。

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  • Q1プロジェクトの概要を教えてください

    宮城を中心に岩手・福島の 3 県で、復興公営住宅のコミュニティ形成に取り組む非営利団体への助成プログラムを展開。単に助成するだけでなく、支援団体の活動で生まれた成果を他の団体や自治体に広く発信・共有することで、別の地域や住宅でも成功事例を導入する流れを生み出した。さらに、復興庁や自治体が類似の補助金制度を設ける契機になるなど、同住宅のコミュニティ支援の裾野を広げる一助となった。

  • Q2どのような経緯でプロジェクトは立ち上がりましたか

    財団設立から 40 年以上にわたって様々な助成プログラムを実施してきたが、これまで災害の復旧・復興を目的にした助成は行ったことがなかった。しかし、未曾有の災害を前に「何もしないわけにはいかない」との強い使命感から、臨時理事会を開いてすぐに助成プログラムを組むことを決めた。
    初年度の 2011 年度は「緊急支援」の名目でイベント開催などを中心に約 7,700 万円( 31 件)を助成。翌年度はより具体的な内容に踏み込み、雇用創出や子どもの居場所づくりなど主に「生活支援」に焦点を当て、約 1 億 5,000 万円( 52 件)を助成した。
    その後、 2013 年度は過去の被災地を視察して、自分たちのまちづくりに役立てる助成プログラムを企画。 2014 年度以降、今も続く復興公営住宅のコミュニティ支援にテーマを絞った。

  • Q3助成金の原資はどのように捻出したのでしょうか

    当財団は毎年、 3 月末に次年度( 4 月〜)の事業計画を理事会で決定している。震災直後は翌 2011 年度の事業計画に盛り込む猶予はなかったため、急遽、補正予算を組んだ。その後も、国内外で行っている通常の助成金額の水準は維持したうえで、震災関連の助成金を上乗せして計上するかたちをとった。当財団の場合は保有資産の運用益で活動する方式をとっており、その一部を取り崩して助成に充てたことになる。それでも、当時その決定に異議を唱える声は聞こえなかった。

  • Q4 3 年目以降の活動方針については、どのような議論がありましたか

    2013 年度以降は、海外の NGO を中心に国内の助成財団や企業も少しずつ支援から撤退する動きが見られ、助成を継続する目的や意義が問われるようになってきた。
    そこで、現地のニーズを探るために有識者や中間支援組織など関係団体へのヒアリングを徹底し、現地事情に詳しい第 3 者の分析をもとに説得を試みた。営利企業からすれば当然の論理だが、説得するには確かな裏付けが必要だった。ちょうどこの頃から、震災助成プログラムに専属的に対応するスタッフを配置し、現地にも何度も足を運んだ。担当者は毎月、半分以上を現地で過ごす時期もあった。

  • Q5「徹底したヒアリング」を通して、どのようなニーズが見えてきましたか

    最も心に響いたのが、復興庁の上席政策調査官(当時)の言葉だった。発災直後は急速に復旧へと駆け上がるが、ある時期からそのスピードが一時的に落ちる「踊り場」を迎えるという。そのため、この停滞期間をできるだけ短くするような支援が必要ではないかとアドバイスされた。
    具体的には、当時は瓦礫の撤去などが進んでいた一方で、高台移転や防潮堤の建設などに関する自治体と住民との合意形成が難航するケースが増えていた。そこで、過去の災害被災地を訪問し、成功や失敗事例を学ぶプログラムを企画。この体験ツアーに助成することにし、阪神・淡路大震災の現場や北海道・奥尻島や新潟・中越の被災地域を視察してもらった。
    そして、この 2013 年度から助成対象となる活動内容を絞り込むことで、助成金額を 3,000 万円( 22 件)へと減らした。

  • Q6その後「復興公営住宅のコミュニティ支援」に集約したのは、なぜですか

    2014 年度の活動方針について再度、有識者などからヒアリングを行ったうえで決定した。当時は、仮設住宅から復興公営住宅への移行が始まっていた。ただ、入居者は抽選方式のため、仮設住宅で一度築いたコミュニティから離れ、再び新たな人間関係を構築せざるを得ない状況だった。阪神・淡路大震災でも問題視された引きこもりや孤独死などを回避するためにも、必要な支援と判断した。
    翌 2015 年度はこの基本方針を踏襲する一方で、住民の方の自立を促すような支援に比重を置くようにした。外部の支援がいつまでも続くわけではない。長い目で見ると、被災者自身もコミュニティの担い手となり、自治会組織などに主体的な役割を担ってもらう必要があったからだ。そのため、例えば自治体などによる類似の補助金制度を自治会が自ら獲得できるように、申請に必要な書類作成などのノウハウを伝えるよう助成団体に要請した。

  • Q7助成対象の選定方法や基準を教えてください

    選考委員会には、中間支援組織など現地の事情に精通した人に入ってもらい、そうした専門的な目線で助成先を判断した。
    評価の過程では、予算の上限も踏まえてあえて先駆的なモデル事例を重点的に支援することにした。例えば、 2014 年度は 25 件の応募に対して採択したのは 6 件だった。そのうえで、活動の成果に関する周囲への積極的な情報発信にも力点を置いた。成功事例や教訓を他の自治体や住民と共有することで、他地域で同様の取り組みを加速させる狙いからだ。このように、情報発信を強く求めたことは一般的な助成プログラムとは大きく異なる特徴の 1 つといえる。

  • Q8周囲への情報発信では、具体的にどのような工夫をしましたか

    例えば、毎年 3 県の各地区で会合や中間報告会、最終報告会を開催している。助成団体が一堂に会し、各地の課題や対策について定期的に情報を共有しているのだ。こうした報告会には復興庁や各県・市町村、社会福祉協議会の関係者も招き、活動の必要性や成果を伝えている。報告書も別途作成し、関係団体に送付している。
    また、 1 年間の助成期間中に半期に 1 度、中間報告書の提出を求めている。決して難易度を高く設定しているわけではないが、半期で見えてきた効果や課題を検証することで、その後の活動がスムーズに進むよう心がけている。

  • Q9これまでに生まれた成果について、教えてください

    報告会などで各地の活動内容を共有することで、成功事例が別の地区でも導入されるような流れが生まれている。例えば、ある地区で導入した復興公営住宅の入居前説明会の開催が挙げられる。入居前に一度顔を合わせることで、実際に入居した後に住民間のコミュニケーションが生まれやすいことがわかった。このため、これを別の地域でも開催する動きが広がったのだ。
    さらに、復興公営住宅のコミュニティ支援に関する類似の補助金制度が、その後次々と設置されるようになったことも大きい。活動報告会に復興庁や自治体関係者を招くなどして、活動の意義を発信し続けてきた成果といえる。これを各地域の自治会などが活用できるようになれば、外部の支援団体が間に入って間接的に支援するよりも資金の効率も高まる。このように、自立型のコミュニティ活動が徐々に生まれている

  • Q10出口戦略をどのように描くか。難しい判断を迫られそうです

    2016 年度も、前年度と同じ趣旨で助成を続ける(実際の助成期間となる 2017 年 4 月からの 1 年間)
    一方で、今回は応募が 10 件のみとなり、 2 年前の 25 件から徐々に減少している。また、自治体などによる補助金制度が新設されていることもあり、このプログラムは一定の役割を終えたという認識だ。そのため、 2017 年度は、これまでの活動を総括する期間に充てる計画だ。研究者を交えて、入念に評価・取りまとめをする。その結果、将来同じような災害が起こってしまった際に今回のノウハウを生かせる可能性が出てくるかもしれない。また、新たな課題が浮かび上がり、再び支援に乗り出すようなケースもあり得るだろう。
    プログラムは大きな役目を終えるが、もともと沿岸部を中心とする被災地域は過疎・高齢化が深刻な社会課題とされていた。当財団の通常の国内助成プログラムはここ数年、「持続可能なコミュニティ」や「地域の生業づくり」といったテーマで地域の課題解決を主眼に置いている。被災 3 県も同じ国内助成プログラムの枠組みで支援することも十分考えられるだろう。

  • Q11数多くの財団がある中、トヨタ財団ならではノウハウを挙げるとすると

    プログラムの運営に特化した専門職「プログラム・オフィサー」の存在が大きい。アメリカなど海外では一般的だが、日本の財団業界で配置しているケースは珍しい。当財団には現在、この専門職を 10 人ほど抱えており、長く様々な助成プログラムを実施してきた。今回の震災助成プログラムでも、彼らは定期的に現地を訪問し、専門的な視点で進捗管理や相談・調整を行っている。これにより、キメ細やかなサポートを実現できている。

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