NPO 法人 ETIC.「震災復興リーダー支援プロジェクト」

地域の経営者やリーダーなどに補佐役となる「右腕」の派遣や、地域活性化のハブになるリーダーの人材育成・投資

NPO 法人 ETIC.
理事 事業統括ディレクター 山内 幸治

支援プロジェクトの概要人材育成支援

地域のリーダーを育成するために数々のプロジェクトを展開。 2011 年 5 月に、経営者をサポートする人材を送り込む「右腕プログラム」を開始し、 5 年弱で約 230 人を派遣。 2017 年 1 月末現在で、延べ 250 人を超えた。現地で起業する人が現れるなど、地域に新たな循環を生んでいる。また、地域のハブになるようなリーダーへの研修や助成活動なども実施しており、人材育成・投資の文化を根付かせることで、地域に活気を生み出すことを目指している。

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  • Q1プロジェクトの概要を教えてください

    地域のリーダーを育成するために数々のプロジェクトを展開。 2011 年 5 月に、経営者をサポートする人材を送り込む「右腕プログラム」を開始し、 5 年弱で約 230 人を派遣。 2017 年 1 月末現在で、延べ 250 人を超えた。現地で起業する人が現れるなど、地域に新たな循環を生んでいる。また、地域のハブになるようなリーダーへの研修や助成活動なども実施しており、人材育成・投資の文化を根付かせることで、地域に活気を生み出すことを目指している。

  • Q2プロジェクトを開始した経緯を教えてください

    東日本大震災発生後の 2011 年 3 月 14 日に、復興に尽力する地域のリーダーや起業家を支援するための「震災復興リーダー支援プロジェクト」を立ち上げた。これまで社会起業家を支援する事業を実施してきた経験から、リーダーや起業家を補佐する人材が鍵を握ることは想定できたからだ。
    とはいえ、現場の状況をつかめないと動きづらい。そこで、全国の NPO が連携し、被災者を NPO とつないで支えるプロジェクト「つなプロ」に参画。その活動の一環で宮城県南三陸町の避難所を訪れていたボランティアスタッフから、避難所を仕切るリーダーに補佐役を置きたいという提案があった。 3 週間ほど試したところ、リーダーの元に支援ニーズに関する情報がどんどん集まってくることがわかり、彼らを支える仕組みをつくることが重要と手応えをつかんだ。正式にリーダーの右腕を派遣することに活動コンセプトを絞り、 2011 年 5 月に「右腕プログラム」を開始することにした。

  • Q3「右腕プログラム」はどのように運用を開始しましたか

    派遣期間はスタート時には 3 カ月、のちに最長 1 年間に延ばし、人件費を支給するスキームにした。派遣人数は初年度に 74 人に達し、快調な出足を切る。また、派遣された「右腕」の中から現地で起業する人が現れ、その人にさらに右腕人材を送り込むような循環が生まれた。こうして、派遣人数を順調に積み上げていった。

  • Q4活動資金はどのように調達したのですか

    特に当初は寄付で賄ったが、 8 割以上を海外の企業・団体が占めている。この活動は「中間(後方)支援」であるため、その重要性を理解してもらうには国内よりも海外の方が交渉しやすいと判断した。過去、視察で訪問したことのある NPO のジャパン・ソサエティ(アメリカ)やグローバルギビング(同)、創業当時から関係性の深い IT 企業のセールスフォース・ドットコムをはじめ、手元にあった海外のパイプをあの手この手でフル活用した。
    国内の企業・団体からの寄付も含め、総額 9 億円が集まった( 2015 年 5 月末時点)。お金の「色」は同じでも、「意味合い」は異なる。それを嗅ぎ分け、寄付集めを最初から軌道に乗せられたことは「右腕プログラム」が動かすうえで重要な鍵を握った。

  • Q5海外から寄付を集めるための秘訣は何ですか

    活動の足跡を記録し、定期的にレポーティングすることだ。専任スタッフを配置して英語版の資料を作成するなど、継続的した情報発信には力を注いできた。そうした調査・報告にコストを費やすのは、欧米の NPO では主流となっている。一見すると「本丸」ではない骨の折れる作業に見えるが、実はこれこそが「本丸」といえる。
    こうした調査は、支援活動で成果を上げるうえでも重要だった。現地のリーダーや右腕人材へのアンケート調査などを分析することで、現場のニーズの変化を把握することができ、新たなプロジェクトの立ち上げや制度変更のきっかけになっているからだ。

  • Q6派遣先の選定において、意識したことはありますか

    「人」をマッチングすることは決して簡単ではない。緊急期こそオープンに受け入れる体制を敷いたが、決してどこでもいいから受け入れるというスタンスではなかった。これまで本業で続けてきた社会起業家の支援などを通じて、「ハブ」として地域の他の活動やプレイヤーに影響を与えるようなリーダーをいかに育てるかが重要だとわかっていた。それを踏まえ、 2013 年を境に「復興支援」から「事業投資」に舵を切った。「ハブになり得るポテンシャルをもっているか」「中長期的な視点で事業として継続していけるか」といった点を明確に選考基準に設定し、状況に応じて細かな制度変更も繰り返してきた。

  • Q7具体的にどのような制度変更があったのでしょうか

    例えば、当初は右腕人材の活動資金を全額支給(月 15 万円)していたが、それを 1 / 2 補助に変更。仮に受け入れる事業者が月額 15 万円支給した場合、こちらも 15 万円補助するという内容で、そうなると 30 万円の労働対価が生まれることになる。そうすることで、右腕人材にとってボランティア活動ではなく、キャリアプランの 1 つとして思い描けるようになったのだ。実際、派遣者のアンケート調査では、当初の参加動機は復興への貢献度を重視する傾向があったが、次第に専門性を活かしたいといったニーズが高まっていることがわかっていた。
    またその結果、当初 20 代の首都圏出身者が多かった参加者の属性も、 2015 年からは 30 代が最多の 4 割を占めるようになり、岩手・宮城・福島県出身者が過半数に到達。スキルを持った U ターン人材が、各地域に生まれていることなどが浮かび上がっている。募集案件の状況を、ニーズの変化とうまくマッチングさせることが重要だった。

  • Q8プログラム開始から、これまでの成果を教えてください

    開始当初は派遣人数を 3 年で 100 人と目標設定したが、 1 年数カ月で達成。その後 2 度も上方修正し、 38 市町村(岩手・宮城・福島県)の 114 団体に 228 人を派遣した( 2016 年 3 月時点)。このうち、派遣先にそのまま就職するなど約 6 割が期間終了後も東北にとどまり、さらにそのうちの 22 人が現地で起業している。受け入れた現地リーダー側も、 7 割以上が「組織基盤の強化」「新しい視点(事業)の獲得」につながったとするアンケート結果も明らかになった。
    魅力的な人材や事業が生まれ、地域に乏しい「人材に投資する」という考え方も少しずつ生まれつつある。

  • Q9「右腕プログラム」に続くプロジェクトも数多く実施していますね

    人材育成の場合、最初から 10 年スパンで活動を続ける必要があると思っていた。人材への投資・育成を持続可能な取り組みにするためにも、そのノウハウを現地化させていくことが欠かせない。これまでは「右腕」の派遣を通して地域のリーダーを支援してきたが、地域から自発的に新しいリーダーが生まれるような仕組みをつくる必要があった。
    2013 年 7 月以降、例えば現地のリーダーたちが、ハリケーン被害後に起業率が急上昇したアメリカ・ニューオリンズを視察するプログラムを実施したほか、地域の人材発掘・育成に取り組む活動団体へ助成も開始。さらに、リーダー同士の交流を生み出すためのプラットフォームとして、現場のリーダーを 2 泊 3 日で訪ねる研修プログラム「東北オープンアカデミー」の設立などに取り組んできた。リーダーを支える仕組みをつくる方針は首尾一貫しているが、 5 年、 10 年先を見据えて活動をどんどん広げている。

  • Q10熊本地震後も「右腕プログラム」を展開しました。有事に即対応するには何が必要ですか

    平時の「関係資本」が重要だ。多くの NPO がタッグを組んだ「つなプロ」を筆頭に、東日本大震災を経験して痛感した。平時から仕事で関係を持ったり、年に 1 回でもイベントを共催したりするような関係をつくり続けていく。そうした数々の「点」が、緊急時に「線」となれば大きな力になるはずだ。

  • Q11今後に向けて、課題と展望を教えてください

    地域に人材投資の重要性が根付くまでには、まだ時間がかかるだろう。右腕人材の派遣先は、震災後に外部から東北に定着した起業家・リーダーに多いのが現状だ。地場の事業者が迎え入れるケースは増えつつあるが、まだ多数派ではない。
    東北に限らず、地域には人材に対して投資するメカニズムが乏しい。人材はコストで、割ければ割けるほどいいという発想が根強いのだ。人材に投資して新たな事業を生み出すことが、地域を豊かにするという意識を長い歳月をかけて醸成していく必要がある。 2016 年 9 月には、全国 8 つの自治体と連携して「ローカルベンチャー推進協議会」を立ち上げた。起業・経営スキルに長けた首都圏の人材を呼び込み、地域を活気づけようという取り組みだ。今後は、全国規模で活動をさらに強化していく。

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