株式会社 WATALIS (ワタリス)「着物地のリメイク雑貨・ブランド化」

全国の箪笥に眠る古い着物地をリメイクし、再び世に送り出す「アップサイクル」に取り組むブランド。亘理町の女性たちが着物地の色や柄を活かしながら丁寧に手作りし、日本の意匠の美しさに新たな命を吹き込んでいる。

株式会社 WATALIS (ワタリス)
代表取締役引地 恵

支援プロジェクトの概要地域産業支援

宮城県亘理町で、全国からの譲り受けや仕入れた中古の着物地を地域の女性たちの手で加工し、「 FUGURO (ふぐろ)」などのリメイク雑貨商品を企画・製造・販売している。地域資源を活用した手仕事によるものづくりを通して、古き良き習わしや感謝の心をかたちにし、町の復興を願う新たな仲間とのコミュニティを生み出す。ビジネスとして持続発展させるために、現在は株式会社に移行している。「 WATALIS (ワタリス)」は、亘理町の「 WATARI 」と“お守り”という意味の「 TALISMAN 」を組み合わせた造語。

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  • Q1プロジェクトの概要を教えてください

    宮城県亘理町で、全国からの譲り受けや仕入れた中古の着物地を地域の女性たちの手で加工し、「 FUGURO (ふぐろ)」などのリメイク雑貨商品を企画・製造・販売している。地域資源を活用した手仕事によるものづくりを通して、古き良き習わしや感謝の心をかたちにし、町の復興を願う新たな仲間とのコミュニティを生み出す。ビジネスとして持続発展させるために、現在は株式会社に移行している。「 WATALIS (ワタリス)」は、亘理町の「 WATARI 」と“お守り”という意味の「 TALISMAN 」を組み合わせた造語。

  • Q2プロジェクトの始まった経緯を教えてください

    東日本大震災が起きてから半年後のある日、亘理町の学芸員だった引地がある農家で地域に長く暮らす母親くらいの年代の女性から話を聞く機会があった。昭和の中頃まで、養蚕が盛んだった町の歴史や、家族が着る衣服は女性たちが仕立てており、縫うことは女性にとって生活の一部だったことを知る。
    そして、そこで1つの巾着袋に出会った。亘理に暮らす女性たちは、着物の残り布で仕立てておいた巾着袋に一升のお米を入れて、お祝いや手土産にしていた。「ふくろ」がなまって「ふぐろ」。この「ふぐろ」に詰まった亘理の女性たちの暮らしや生き方を受け継ぎ、伝えたい。そのために、「ふぐろ」を甦らせ、新しい形で世に送り出したい。その思いが、この事業の原点だ。当時は、人口減少やコミュニティの崩壊、また事業者も数多く被災し、特に女性の雇用不足は深刻な問題だった。 2011 年 10 月、妹と高校時代の友人とプロジェクトを開始した。

  • Q3このプロジェクトの企画・立ち上げで工夫されたことについて教えてください

    商品のデザイン、品質にこだわった。着物地と鮮やかな無地の生地の組み合わせによって、伝統的な文様の着物地を現代的な雑貨に生まれ変わらせるデザイン、そして技術研修の継続と徹底した検品による縫製のクオリティの管理だ。
    それでも、活動エリアが被災地域で、事業に携わっているのが女性であることなどから「誰かスポンサーがいて潤沢な資金がある」「主婦が余暇時間で行う短期的な取り組み」「クオリティは二の次の商品」などと決めつけられたり、「復興グッズなのに、応援で買うには高い」と言われ続けてきた。
    それでも、商品の製作・販売を通じて資金を積み上げ、少しずつ事業を拡大してきた。行政の補助金や相談事業、専門家とのネットワークなどを積極的に活用し、新商品の開発にチャレンジするための資金や知見を集めた。また、地元の女性たちに力をつけてもらうため、できるだけ業務を内製化する体制整備やビジネス知識の習得などにも力を入れた。
    一時、製作業務の登録者は 30 代から 70 代までの女性たち 40 名ほどに上った。震災直後は、「女性のコミュニティ創出」の視点で増やしてきたが、株式会社に移行した現在は「仕事」の意味合いが強くなってきたため約 10 名となっている。

  • Q4立ち上がったプロジェクトを進めていくために具体的に行ったことを教えてください

    プロジェクトから一般社団法人( 2013 年 4 月)、そして株式会社( 2015 年 5 月)へと組織体を変化させたことが挙げられる。株式会社に移行する際は、経費はかけられない中で行政の相談事業などを通じて専門知識の不足を補いながら、事務手続きはすべて自前で済ませた。また、商標登録( WATALIS のロゴマーク)や意匠登録( FUGURO )も、同様に行政の相談事業を活用して行った。この期間は、ほとんど営業活動ができず売り上げが伸び悩んだが、会社にしたことで事業を持続する意思を対外的に明確に示せたことは大きな成果だった。
    また、ビジネスコンテストへの応募・受賞や、百貨店をはじめとする販路の拡大を通して、知名度や社会的信頼を獲得してきた。受賞歴では例えば、 REVIVE JAPAN CUP 大賞(主催:復興庁)や DBJ 女性起業震災復興賞(同:日本政策投資銀行)、 JVA2015 「東日本大震災復興賞」受賞(同:中小機構)、カラーミーショップ大賞 2015 ファッション(バック・靴・小物)部門賞(同: GMO ペポバ)などがある。

  • Q5販路はどのように開拓したのですか?

    当初は復興関係のイベントでの委託販売が主だったが、仙台三越の催事に声がかかり、その際の担当バイヤーに「世界に発信していくブランドにしたい」と話し、催事販売が実現。一定の成果を出したことで常設販売へと繋がった。ほかにも、海外を含めて商談会にも積極的に参加するなどした。こうして、今振り返れば無茶とも思える志の大きさに共感し、販売に協力してくださる方が増えていった。現在、国内の常設店舗は 30 (宮城県 21 、北海道 1 、福島県 1 、神奈川県 1 、千葉県 1 、東京都 1 、大阪府 1 )に達し、海外でも 2 店舗で販売するなどの成果をあげている。
    さらにこのうち、 2016 年夏からは東京・新宿のココルミネストアでの常設販売も始まった。 2020 年の東京オリンピックには外国人が数多く来日する。その機会にワタリスの商品を手に取っていただけるよう、首都圏での販売にさらに力を入れていく。

  • Q6プロジェクトの成果と課題について教えてください

    被災地域の企業や海外ブランドとのコラボレーションが実現した。例えば、アイリスオーヤマとは同社が町内で精米した米と FUGURO を組み合わせたギフトセットを販売したほか、スイスの高級時計ブランドであるジラール・ペルゴとは、以前イベントで知り合ったことをきっかけに 2 度にわたり特別パッケージに採用頂くことができた。
    また、メディアでの露出や引地の講演行脚なども認知度アップに相乗効果をもたらしている。メディアはテレビや新聞、雑誌、ラジオなど多岐にわたり、講演も県内を中心に、東京や海外での実績もある。売上げは毎年増え続けており、 5 年累計で約 8,000 万円( 2016 年度見込み含む)に達する。材料の仕入れや商品の運送などは町内業者に委託しており、小さいながらも地域経済を活性化させることに貢献できている。
    当初は「どうせ復興グッズだろう」と品質や事業の継続性を危ぶむ声に晒されながらも、女性たちが一丸となって地道に取り組み続けてきた結果だ。 2016 年 8 月には、 FUGURO が宮城県知事の海外訪問の際の土産品にも採用された。創業から短期間で宮城を代表する工芸品としての地位を確立するに至ったことは、大きな自信となっている。
    一方で、手頃な価格のハンドメイド商品であることに課題を抱えはじめてもいる。量産できないため、類似品との価格競合にさらされやすいからだ。また、縫製の前段階の生地の選別や洗濯、アイロンがけなどの工程に人的コストがかかることも悩みだ。消費者に伝わりにくい部分なので、価格に転嫁しにくい事情がある。

  • Q7成果や課題を踏まえ今後の展望について教えてください

    新たに高価格帯商品の開発に着手しており、 2017 年 2 月のギフト・ショーに出展して披露する予定だ。さらに、アート作品の製作も始め、数十万円のタペストリー製作を受注。こうした芸術性の強いものは、法人向けの需要が見込める。従来の商品も着物地の美しさを知る入口として提供しつつ、「 One and Only 」の商品であるという希少性を顧客に伝えるために、素材や製作にかかる手間をもっと価格に反映させていく方向で考えている。また、その製造過程を俯瞰できるような資料の作成を検討中だ。一連の流れを写真パネルなどで掲示することで、人の手を介した丁寧な手仕事であり、また「一点もの」であることを強調したい。

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