味の素株式会社「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」

「いっしょに作って、いっしょに食べよう!」をテーマに、岩手・宮城・福島の 3 県を中心に、仮設住宅や災害公営住宅での移動式料理教室を展開。栄養面のサポートだけでなく、コミュニティ再生のきっかけも提供している。

味の素株式会社
CSR 部 シニアマネージャー田村 忠

支援プロジェクトの概要コミュニティ支援

「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」は、味の素グループが 2011 年 10 月から継続している東日本大震災の復興応援活動。岩手・宮城・福島の 3 県を中心に、地元の行政、社会福祉協議会、食生活改善推進員協議会、NPO 、大学、仮設住宅の自治会等と連携し、仮設住宅の集会所等で料理教室をはじめとする活動を実施している。

※「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」の取り組みは、2017年4月より公益財団法人味の素ファンデーションに事業移管しました。

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  • Q1プロジェクトの概要を教えてください

    「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」は、味の素グループが 2011 年 10 月から継続している東日本大震災の復興応援活動。岩手・宮城・福島の 3 県を中心に、地元の行政、社会福祉協議会、食生活改善推進員協議会、NPO 、大学、仮設住宅の自治会等と連携し、仮設住宅の集会所等で料理教室をはじめとする活動を実施している。

    ※「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」の取り組みは、2017年4月より公益財団法人味の素ファンデーションに事業移管しました。

  • Q2プロジェクトはどのように始まりましたか

    味の素社では、2011 年 7 月に当プロジェクトの専任担当者を任命し、被災地域に派遣。現地の行政、社会福祉協議会、大学、NPO 等の関係者に、被災地域における「食」や「栄養」に関する課題は何か、ヒアリングを行った。


    その結果、仮設住宅のキッチンの狭さなどに起因する「料理離れ」により、栄養バランスが偏り、これに起因する健康課題が顕在化しているとの声が寄せられた。また、仮設住宅という新たなコミュニティにおける住民同士の交流の希薄化や、高齢者の孤立・引きこもりといった課題も挙げられた。


    そこで、味の素グループは、栄養バランスの良い食事を住民の方々と「いっしょに作って、いっしょに食べる」ことで、住民の方々の栄養課題を改善するとともに、新たなコミュニティを築くきっかけにしていただきたいと考えた。


    そして、2011 年 10 月、地元の行政、社会福祉協議会、食生活改善推進員協議会、NPO 、大学、仮設住宅の自治会等を主催者とし、味の素グループは移動式調理台等の資材や栄養バランスの良いレシピ等の知見を提供する形で、「移動式料理教室」の活動を開始した。

  • Q3プロジェクトを進める上で難しかった点、またそれにどのように対応したのか教えてください

    立ち上げには当然、予算や資材の確保が必要だが、震災の発生が 3 月で、(味の素社は 3 月決算会社で)その時点では 2011 年度の予算も確定し、新たなプロジェクトを立ち上げるための予算の確保が難しい状況だった。こうした中で、このプロジェクトの立ち上げ時期の担当者は、以下に着目した。
    (1)既に決まっている各部門の予算の中から、どの部分については無理なく(既決の予算項目の範囲内の費用として)支出できるかの情報収集
    (2)既存の事業資産の中から、このプロジェクトでも活用できるような(遊休)資産が無いかの情報収集
    そして、(1)や(2)の組み合わせの結果が、このプロジェクトの形(移動式料理教室)に繋がった。

  • Q4このプロジェクトの企画・立ち上げで工夫されたことについて教えてください

    円滑な立ち上げに際してポイントとなったのは、2 点。
    「 1. 本業で培った知見や資産を活用したこと」と、「 2. グループ従業員ボランティアを活動に参画させたこと」である。


    「 1 」は、震災前から味の素グループでは、料理初心者向けの移動式料理教室の事業を展開しており、移動式調理台をはじめ、移動式料理教室を実施するための資材がある程度、揃っていた。
    加えて、味の素グループには、創業以来 100 年の間に培った「アミノ酸」を起点とする栄養に関する多様な知見があり、この知見に基づき「おいしく・楽しく食べる」ことに繋がるあらゆる方法も追及し続けている。こうした背景から、移動式料理教室は、味の素グループとして無理のない提案であった。


    次に「 2 」は、当プロジェクトでは、活動開始( 2011 年 10 月の移動式料理教室開始)時点から、グループ従業員をボランティアとして参画させた。現地までの往復旅費や、前泊が必要な場合の宿泊費は、味の素社については人事部予算、グループ各社については、震災発生直後にグループ従業員や OB / OG を対象に実施した募金(あしたのもと募金)から支出することとした。
    こうして、グループ従業員が被災地の現状を目の当たりにすることや、そこで味の素グループの「食と栄養」の知見が役立てられていることを実感することが、当プロジェクトに対するグループ内での共感創出に繋がっている。

  • Q5立ち上がったプロジェクトを進めていくために具体的に行ったことを教えてください

    ポイントは 3 点。「 1. 参加型の調理会とすること」、「 2. 料理教室の主催者は協働パートナーにすること」、そして「 3. 料理教室のテーマは、協働パートナーに決めていただくこと」である。


    「 1 」は、当プロジェクトの目標のひとつは、料理づくりを通じて、ご参加者が繋がり、コミュニティを再生のきっかけにしていただくことである。仮設住宅の住民の方々が交流を深めるためには、食べるだけでなく「いっしょに料理をする」という体験が大切と考えた。また、塩分摂取量の多い東北地方において、メニューを通じて減塩を体感いただき、ご自身で日々の健康管理に努めていただきたいとも考えた。


    「 2 」は、行政や NPO 、社会福祉協議会、食生活改善推進員協議会、仮設住宅の自治会など、地域の社会課題に向き合っている方たちが集いの場を提供し、そこに住民を導くことで、両者の結びつきがより親密なものになることを願ってのことである。また、企業の単独開催としてしまうと、(単発的な)イベントのような形になり、継続した活動に繋がり難いことも考慮しての判断だった。なお、私たちは、こうした「地域の社会課題に向き合っている方たち」のことを、「協働パートナー」とお呼びしている。


    「 3 」は、当プロジェクトの料理教室のテーマは、各地の課題に対応して変えている。例えば男性の引きこもりが深刻な課題であれば、男性対象の料理教室を開催する、といった感じである。そして、こうしたテーマは必ず、「協働パートナー」のみなさんに考えていただいている。各地の課題は「協働パートナー」のみなさんが一番、よくお分かりであり、その声をよくお聞きしながら進めていくのが重要であると考えている。

  • Q6現地の「協働パートナー」の方の発掘、関係構築はどのように進めましたか

    1. 認定 NPO 法人のジャパン・プラットフォームからは、弊社では拾いきれない被災地の情報について多くの情報をご提供いただいた。後に「協働パートナー」となる団体のいくつかとは、ジャパン・プラットフォームのご紹介や情報提供がもとになり、繋がることができた。


    2. 現地の「協働パートナー」の皆さんとは、とにかく真摯に、「傾聴」の姿勢を忘れずに、対応を続けた。
    そして、「協働パートナー」の皆さんがそれぞれ、自分たちの(あるいは、自分たちの支援する)コミュニティに対し、どのような課題を持っているのか、また、この課題に対しどのような解決策を提案したいと思っているのかを聞き取り、その思いをともに実現できるような提案を心がけた。
    例えば石巻市の活動では、料理教室(調理実習)は「後片付け」まで参加者に行わせたい、という思いを「協働パートナー」の皆さんが持っていて、これに対応して、通常はプロジェクトスタッフのみで行う「後片づけ」を参加者に行ってもらっている。些細なことのように思えるが、こうしたことの積み重ねが、信頼に繋がっていると思う。

  • Q7共同パートナーとの関係構築を進めた結果、どのような変化がありましたか

    企業の社会貢献活動は、現地の方から見れば「よそ者が入ってきてやっている活動」であり「企業の宣伝のためのパフォーマンス」のような不信感を抱かれるのも当然と考えた。その前提で、活動開始から現在に至るで、「商品の売り込み」と誤解されるような対応は控えている。それでも現在では、「味の素さんの商品の活用方法を教えて欲しい」といった声さえ聞かれる。これは、私達の地道な活動が被災地域の皆様に受け入れられた結果と、大変ありがたく思っている。

  • Q8プロジェクトの成果・課題について教えてください

    1. 最も大きな成果は、「人脈」である。
    私達はこの活動を通じて、社会福祉協議会や食生活改善推進員協議会の皆さんと出会うことができた。こうしたみなさんは震災前から地域に密着し、社会課題や栄養課題に向き合ってこられた方達である。
    当プロジェクト推進を通じて、こうした方達と出会い、「地域ごとの社会課題は何か」、「その課題に対応するため、企業としてどのようなお手伝いをさせていただくことができるか」を、学ばせていただいた。

    この学びの中で、企業がすべき社会貢献活動は、必ずしも「物資」や「お金」の提供だけでないことが分かった。むしろ求められていることは、企業が、「地域ごとの社会課題」をこうした方達と同じ目線で見つめ、この課題に対し、企業ごとの本業・得意技をもって解決策を提案することだった。
    味の素グループの場合は、それが『「食」と「栄養」』であり、「移動式料理教室」という解決策を提案している。これが、当プロジェクトの本質である。

    2. また、『「食」と「栄養」』による被災地支援は、ボランティアとして参画するグループ従業員が、「味の素グループの一員であることの誇り」を再認識させていただく場にもなっている。
    ボランティア参加経験者は『「食」がいのちの基本であることを実感した』といった声や、研究者や財務部門の担当者など、普段、なかなか生活者と接点が持てない従業員からも『被災地域の皆様から、「ありがとう」と声をかけていただいた。食品企業の一員としての使命を思った。』といった声が挙がる。
    味の素グループの理念は「“食”と“健康”そして、明日のよりよい生活に貢献」することだが、従業員がこのことを実感する場として貴重な機会をいただいている。

    3. なお、当プロジェクトは、「復興ごはん」という書籍を 2016 年 5 月に出版した。この書籍は、東北の地で私達の「協働パートナー」として、ともに歩んでくださった皆さんの「声」を通じて、災害復興期における「食のチカラ」を伝えるものである。このような書籍が出版できたことも、このプロジェクトが築いた「人脈」があってこそと、心から感謝している。

    「復興ごはん」書籍紹介サイト URL(小学館サイト内)
    https://shogakukan.co.jp/books/09388485

  • Q9プロジェクトを進める上で難しかった点、またそれにどのように対応したのか教えてください

    プロジェクトの「成果」をどのように認識し、共有するかという点である。
    このプロジェクトはあくまで、「災害復興期の支援」という社会貢献活動としてスタートしているが、長く続けるほどに、特に社内からは具体的な「成果」を求める声が少なからず聞こえてくるようになった。すなわち、栄養改善という側面での「成果」、コミュニティ再生という側面での「成果」を、いわば数字で示すべき、との意見が出てきた。


    この指摘に対してはプロジェクト内でも様々な議論をした。
    こうした議論の過程も経て、いまのところ思うことは、こうした「災害復興期の支援」というテーマに対する企業の「成果」(どういう価値を得ることができたか)を検証する上では、地域からの信頼や地域の人々との繋がり(人脈)、そして、地域ごとの「真の社会課題」を抽出するまでのプロセスの体感といったような、ただちに数値化できない部分に目を向ける必要もあると考えている。こうした要素が、長期的視点に立ったとき、企業に大きなリターンを生むものではないかと思う。


    そこで、当プロジェクトの社内外でのコミュニケーションは、この点に配慮して進めている。先ほど紹介した書籍「復興ごはん」でも、当プロジェクトが何をしたか、ではなく、当プロジェクトがどのようにして被災地域の皆様に寄り添うことができたのか、というプロセスをお伝えすることを重視した。

  • Q10成果や課題を踏まえ今後の展望について教えてください

    当プロジェクトは、「仮設住宅がなくなり、復興の足取りが確かなものになるまで」活動を続けることを宣言している。


    復興が少しずつ進む今、東北の地では、「仮設住宅」から「災害公営住宅」への移転も進んでいる。そして、「災害公営住宅」という、また新しいコミュニティにおける人と人との繋がりの課題も、顕在化している。
    当プロジェクトはいま、こうした課題に対しても、移動式料理教室を通じ「いっしょに作って、いっしょに食べる」という解決策を提案している。


    また、当プロジェクトの日々の地道な活動の結果、味の素グループは、行政をはじめとした現地パートナーからの信頼を獲得した。この信頼が、行政と協働で「地域課題を本業で解決する」という新たなビジネスモデル構築へ発展しつつある。一例として、宮城県庁とは、「宮城県水産業復興支援」という共通テーマの下、小売店における宮城県水産物と味の素社商品との協働販促や、事業所給食における宮城県水産物と味の素社商品を使用したメニューの提供等の事業上の成果に繋がっている。今後もこうした協働を模索しながら、本業を通じた産業復興という側面でも東北の復興を応援していきたい。

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