アクセンチュア株式会社「会津若松 IT 産業誘致・雇用創出プロジェクト」

福島県会津若松市や会津大学などと共に産官学連携で地域産業振興と雇用創出を行う。最先端の ICT を活用して、高付加価値型の産業を誘致して、地元雇用を生み出すことを目指した

アクセンチュア株式会社
福島イノベーションセンター センター長中村 彰二朗

支援プロジェクトの概要地域産業支援

福島県会津若松市や会津大学などと共に産官学連携で地域産業振興と雇用創出を行う。最先端の ICT を活用して、高付加価値型の産業を誘致して、地元雇用を生み出すことを目指した。さらに、それを地方創生の先行モデルとして他の地域に水平展開していくことを構想している。

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  • Q1プロジェクトの概要を教えてください

    福島県会津若松市や会津大学などと共に産官学連携で地域産業振興と雇用創出を行う。最先端の ICT を活用して、高付加価値型の産業を誘致して、地元雇用を生み出すことを目指した。さらに、それを地方創生の先行モデルとして他の地域に水平展開していくことを構想している。

  • Q2プロジェクト開始の経緯を教えてください

    2011 年 4 月に復興支援に関する政府の企業向け説明会があった。各地域から状況報告があった中、会津若松市担当者の「復興支援だけではなく拠点を構えてビジネスをしてほしい」とのメッセージに感銘を受けた。復興・再生から新たな日本の都市モデル構築に貢献したいという思いと結びついた瞬間だった。


    その年の 6 月に会津若松市を初訪問し、7 月に市・大学と基本協定を締結。8 月に「アクセンチュア 福島イノベーションセンター」を開設して活動を始めた。その後、10 月まで 4 時間にもおよぶ会議をほぼ毎週 2 回繰り返し、スマートシティ戦略を中核としながら、ICT を梃にした高付加価値産業を集積していくという復興計画を策定した。もともと地方は工場などの誘致によって雇用を生み出してきたが、工場はよりコスト競争力のある海外に流れていく傾向があり、持続的に雇用を生み出していくことは難しい。また、様々な企業の本社機能が集中する東京などの都市部との所得格差の問題を生み、人口の流出にもつながっている。高付加価値な産業を集積するのはこうした課題を打破するためであり、ICT は新たなビジネス機会や雇用機会を創出する可能性を秘めたものだ。また、計画策定にあたっては、地域の歴史や文化、伝統工芸などの強みを盛り込み、地域住民の理解を促した。この考えを「レトロフィット」と呼んでいる。

  • Q3現地とどのように関係を構築しましたか

    最初は行政の長でありながら先進的なビジネスマインドやバランス感覚を持つ市長やコンピュータサイエンス専門大学である会津大学の学長と密に意見交換し、アドバイスなどをいただいた。しかし、だからといってそれぞれの思いを持っている市役所など地元関係者との合意形成などは簡単ではなく、あるプロジェクトを実現するために何度も交渉して実現していく必要があった。トップ同士の関係性だけでなく、議会や役所とも頻繁にコミュニケーションするなど様々な地域のステークホルダーとのつながりを丁寧に構築した。またアクセンチュア 福島イノベーションセンター開設後は自身を含む 5 人のスタッフが現地のオフィスに常駐し、地域と運命を共にする覚悟を示した。

  • Q4どのようにプロジェクトは形成されていきましたか

    会津地方は沿岸部などと比べると震災の実質的被害は小さかった。また、一次産業に加えて IT や自然エネルギー、観光など雇用の受け皿となる産業が数多く存在する。さらに、IT 分野では会津大学が立地し、人材育成や研究開発の基盤もある。復興・再生の取り組みから、新たな地方都市のモデルを構築し、他の地域に展開できる素地が揃っていた。


    復興計画においては、住民が必要とする行政サービスや地域の民間サービスなどの機能を都市というプラットフォーム上に組み込む「都市 OS 」という構想を中核に据えた。あらゆる公共システムを標準化しつつ、そこで生み出されるデータをオープンにする考え方。行政や医療・福祉、防災、エネルギーなどこれまで分散していたシステムを標準化し、オープンに連携させる。今後まちづくりを進める上で様々なベンダーや企業が参入してくることを想定し、オープンな基盤を設計していくことで重複などの無駄を無くすとともに、多くのプレイヤーが参入しやすい環境を整備した。この考えを具体化したものの一つがスマートシティ構想だ。

  • Q5どのような目的・目標を設定しましたか

    当初から復興支援だけでなく、中長期的な視点で普遍的な日本の地域課題解決の実証モデルを構築することを軸に置いた。日本は産業や雇用などあらゆる社会インフラが首都圏に一極集中しており、その脆弱性が今回の震災で露わになった。その意味でも会津で地方分散化の実証実験を行い、その成果を他の地域、全国に普及させていくことに価値があった。


    またデータをオープンにすることで、住民の主体性を引き出すことも重要なポイントだと考えた。近年は公助への期待が大きすぎる傾向があるが、公共サービスなどに関するデータを可視化することで、住民の自らの行動を変える(自助)ような意識変化を促したかった。

  • Q6予算はどのように獲得しましたか

    当時の日本オフィスの社長からのコミットメントもあり、グローバルから一定予算を確保した。もちろんこれは、CSR 活動ではなく、ソーシャル・インベストメント(社会的投資)という意識が強かった。日本の地方創生のモデルケースとして横展開していくことや、最先端のビジネスの実証フィールドとして活用していくことを想定した。また、例えば会津大学ではデータ分析専門家であるアナリティクス人材を養成するための寄付講座を開講しているが、将来、地域にイノベーションをもたらす人材を育てるという意味では長期的な投資となる。さらに 2 年目からは会津若松市に対して政府の復興関連予算もつくようになり、この結果、スマートグリッド事業も具体化することになった。

  • Q7どのような体制をつくりましたか

    福島イノベーションセンターには中村のほかに、地元の会津大卒の社員や、官公庁へのコンサルティング経験がある社員など計 5 人のコンサルタントを常駐させて事業を開始した。さらに 2013 年からは地元での雇用も開始した。また、東京オフィスと会津を往来する形でプロジェクトに参画するメンバーもいる。地元で雇用したのは 5 人のデータサイエンティストで、学歴に問わず若い人材を中心に採用し、育成している。予想以上の成長ぶりに手応えを感じている。

  • Q8具体的にどのようなプロジェクトを立ち上げましたか

    最初の具体的プロジェクトは 2011 年の総務省補正予算で会津若松市が「スマートグリッド通信インターフェース導入事業」に採択されたことで開始した。スマートシティの第一歩だ。また、オープンデータの取り組みを加速化するという意味で、会津若松市では様々な行政データを公開する Web サイト「 Data For Citizen 」を開設し、API を公開することで市民がそれぞれのニーズに基づいて独自のアプリをつくれるようにした。行政と市民間のコミュニケーション強化を目的に地域情報を集約したポータルサイト「会津若松+(プラス)」も立ち上がった。

  • Q9プロジェクトを進めるうえで、意識したことはありますか

    例えばスマートグリッドでは、複数メーカーの「 HEMS 」(ホームエネルギーマネジメントシステム)機器を採用することでメーカー主導ではなく、地域主導のエネルギーマネジメントを構築し、市民の主体性を引き出すことが大事だと考えた。100 世帯を対象に行った実証実験で電力使用量を最大 27 %削減することができた。

  • Q10一方で、どのようなことに苦労しましたか

    地方では「雇用=ハコモノ」という考え方が根強く、実体の見えづらい IT 企業の誘致などに懐疑的な見方をする人もいた。しかし、例えば工場は中国など新興国に需要がシフトしており、ICT などの成長産業を誘致し、こうした ICT を活用して地域で産業を興していくことこそが長期的な雇用の創出につながることを粘り強く説いていった。


    人材育成では、社会に革新的なサービスを生み出す「ソーシャル・サイエンス」を教育現場に取り込んでいくことの重要性を理解してもらうのに苦労した。日本ではこの学問領域は世界的に後れを取っているとされており、大学などの学術関係者の方々も巻き込んで、ソーシャル・サイエンスをカリキュラムに取り込んでいく可能性について議論をしている。

  • Q11どのような成果を生み出しましたか

    会津若松市が掲げる「アナリティクス産業の集積による地域活力再生計画」が、政府の地方創生のモデル事業である「地域再生計画」に認定された。


    また、「 Data For Citizen 」で公開されるオープンデータを利用して様々なアプリのアイデアが生まれており、2016 年 2 月時点で 18 もの市民のためのアプリが公開されている。例えば最適な市内の観光ルートをナビゲートするものや、最も近い病院の場所を表示するアプリ、さらには市内の線量データを見える化したアプリなどがある。

  • Q12地域と連携するうえで、企業にはどのようなことが求められますか

    企業の本社幹部レベルが自ら地域で仕事をすることが重要だ。複雑な地域の課題を掘り起こし、解決策を見つけ出す能力と、さらに実行段階で地元企業や住民などと利害調整するなど高いスキルが求められる。


    グローバルな視点を注入することも 1 つの手法だ。例えば、会津若松市では 2013 年にはスマートシティのトップランナーであるアムステルダム(オランダ)との提携することを発表した。今や、改革のヒントはグローバルにあり、世界中の先端事例に触れることで地域発のイノベーションは加速する。

  • Q13受け入れ側の地域に求められるものは何でしょうか

    外部から入った人材が頼ることができるメンター(助言者)を用意することだ。プロジェクトを前進させるには自治体や企業、住民など様々なセクションと合意形成を図る必要がある。メンターには地域内での様々なネットワーキングを支援し、特有のコミュニケーションの仕方に関するアドバイスができ、地域の変革の合意形成をとりまとめることのできるキーマンであることが望ましい。

  • Q14今後の展望を教えてください

    今後会津では地域主導で高付加価値ビジネスを推進していく体制を整え、「機能移転」のフェーズに入っていく。


    具体的に会津若松市ではアナリティクス関連の IT 企業のオフィスや R&D 機能を集積した約 600 人収容( 15 社)の拠点を整備する計画などが進んでいる。それは、東京からの機能移転と会津大学卒業生の地元への就職率を引き上げるための産業基盤整備が目的である。現在会津大学の卒業生の 80 %が首都圏へ就職している。地方創生の根幹は若者が地元に残ることだ。アクセンチュアとしても雇用といった面で貢献していく。

  • Q15それに向けて課題を教えてください

    政府による「地方創生」の旗振りは自治体の意識を変え、やる気を引き出している。あとは、それを民間企業が覚悟をもって後押しできるかが鍵になる。「東京と同じ仕事があれば地元で就職したい」と考える若者は少なくない。企業が東京など首都圏を中心とした価値やマインドにとらわれ過ぎず、優秀な人材や仕事を地方に送り込むことができないか検討する必要がある。

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