グーグル合同会社「イノベーション東北」

東北で新規事業や町づくりなど、新しいチャレンジに取り組む人々と、その挑戦を応援したい人々をつなぐクラウドマッチングプラットフォームの運営

グーグル合同会社
防災・復興プロジェクト プログラムマネージャー松岡 朝美

支援プロジェクトの概要地域産業支援

東北で新規事業や町づくりなど、新しいチャレンジに取り組む人々と、その挑戦を応援したい人々をつなぐクラウドマッチングプラットフォーム。たとえば、地場の水産品で作った新商品のブランディングを強化したい地元メーカーと、製品開発やパッケージデザインのスキルを持つ都会のサポーターや、新設する工場で新たに品質管理の認証を取得したい水産加工会社と大手メーカーで品質管理のノウハウを持つ人など。イノベーション東北は、そんな両者が出会う場を提供し、東北でのチャレンジを後押ししている。

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  • Q1プロジェクトの概要を教えてください

    東北で新規事業や町づくりなど、新しいチャレンジに取り組む人々と、その挑戦を応援したい人々をつなぐクラウドマッチングプラットフォーム。たとえば、地場の水産品で作った新商品のブランディングを強化したい地元メーカーと、製品開発やパッケージデザインのスキルを持つ都会のサポーターや、新設する工場で新たに品質管理の認証を取得したい水産加工会社と大手メーカーで品質管理のノウハウを持つ人など。イノベーション東北は、そんな両者が出会う場を提供し、東北でのチャレンジを後押ししている。

  • Q2プロジェクト開始までの経緯を教えてください

    発災直後はパーソンファインダーをはじめとするインターネットのツールを活用した緊急支援や被災地からの情報発信支援を展開。 同年 7 月に「デジタルアーカイブプロジェクト」としてストリートビューでの被災地撮影を開始した。同プロジェクトでは、 2012 年 11 月に震災遺構、2013 年 3 月に福島県浪江町(当時、警戒区域)を撮影、ストリートビューで公開している。


    2012 年夏頃から事業者向けにウェブサイト制作ワークショップを開始したが、参加した事業者と直接話してみると、それぞれが抱える課題は多種多様で、画一的なセミナーではなく、より柔軟で細やかな支援が必要だと感じた。ワークショップやストリートビューの撮影を通じ出会った事業者の皆さんの熱に触れ、被災地で新しいことにチャレンジしようとしている人たちを、インターネットの会社としてどのように支援できるかを考えた。


    社内での喧々諤々の議論が行われたが、Google だけでは多様な課題を持つ事業者に応えられないこと、現地で必要とされている支援は実はビジネススキルやアプリ開発の能力で、これらの力はインターネットで届けることができるのではないかと気付いたことで、東北の事業者とスキルを持つ被災地外のサポーターをマッチングする「イノベーション東北」のアイディアが生まれた。


    実際に事業者やサポーターがどれだけ集まるか不安はあったが、震災直後に避難所に貼りだされた名簿の写真を共有してもらう「避難所名簿共有サービス」を展開した際、 5000 人以上のユーザーがボランティアで写真を撮影・共有し、名簿の情報をパーソンファインダーに書き起こしてくれた。その経験から、善意をつなぐことができるインターネットの力にかけてみようと考えた。

  • Q3そのアイディアは現地には受け入れられましたか?

    IT 企業が突然やって来て、支援してくれる人をインターネットでマッチングすると言う。事業者の皆さんからすると、まったく意味がわからないという状況だったと思う。当初はひたすら、ご用聞きでもなんでもやるという覚悟で現場に通い詰めたことで、徐々に理解が進んでいった。

  • Q4どのような目標を設定しましたか?

    定量的な指標としては、イノベーション東北への登録事業者数、登録サポーター数とマッチング数をまず設定した。当初はそもそもマッチングが可能なのかというところからのスタートで、最初の 3 ヶ月で 100 件のマッチングを目標とした。Google では「think big, start small」という考え方があり、まずはその考え方に沿って、まずやってみることに注力した。

  • Q5どのような体制をつくりましたか?

    震災直後のフェーズでは、海外のチームも含めて、東京オフィスはほぼ全社をあげてサービスの開発・提供に取り組んだ。「イノベーション東北」を開始した産業復興のフェーズでは、初めて防災・復興支援に専任の担当者を 1 名つけ、それ以外のコアチームは 20% ルール*で参加する社内メンバーと、社外では中間支援組織に業務を委託している。常に固定したメンバーがいると言うよりアメーバのように、必要な時に必要な人材が集合するプロジェクトになっている。


    *20% ルール:
    自分の業務時間の 20% を本来業務以外の新しいプロジェクトに使える社内のルール。

  • Q6中間支援組織の役割はなんですか

    現場にとって本当に必要な支援を届けるために、被災地を肌で知っているチームとの連携が必要だった。このチームとは、自治体や NPO との協力体制の構築を始め、プロジェクト組成の議論も共にした。イノベーション東北がスタートしてからは、事業者側、サポーター側のコーディネート担当として時期によるが 10 名前後が常時参画している。

  • Q7予算はいくらですか

    様々なプロジェクトチームの予算を集めて運用資金にしており、予算確保のためには常にプロジェクトの価値を関係者に説得する必要があった。特に、東北の現状を知らない海外のステークホルダーには丁寧なコミュニケーションを心がけた。

  • Q8予算確保に際してはどんなストーリーをつくりましたか

    それぞれの活動がどれだけのインパクトを社会に提供できるかは常に問われることに加え、グローバル企業として、たとえば、同じリソースで、「発展途上国の貧困地域への支援」などと比較される。イノベーション東北においては、数字を積み上げるだけでなく、先進国が直面する高齢化社会や情報格差の解消といった他国への展開可能性を含め、プロジェクトが日本において持つ意味を強調した。

  • Q9具体的にどのようなことをしましたか

    予算をファンドしているチームの責任者の来日時には、その投資が東北でのどのような活動につながっているかをきちんと説明した。可能な限り東北を案内し、 Google のテクノロジーが現場でどんな貢献を果たしているかという経験を持ち帰ってもらい、「あのプロジェクトはいいプロジェクトだ」、「グーグリーだ」と心底思ってもらえるためのコミュニケーションを大事にした。「グーグリー」とは、社内でよく使う表現で、「Google らしい」ことを表す。画一的な解釈はないが、インターネットやテクノロジーに対する信頼であったり、それらを使って社会に貢献できるという信念など、Google が共有する価値を表している。


    その他にも、社内のボランティアを募ったり、プロジェクトのファンを増やすために、社内報や、 TGIF と呼ばれる世界中のメンバーが集まるミーティングで紹介されるように調整した。そういう場でプロジェクトを紹介できると、世界中の社員から反応がある。手伝いを買って出てくれる人もいれば、プロジェクトのコアメンバー以外が自発的に東北ツアーを組む人が現れ、これまではプロジェクトを知らなかった人たちが参加してくれるようになった。

  • Q10プロジェクトはどのように進みましたか

    2013 年 5 月に「イノベーション東北」を公開したが、このプラットフォームを知ってもらい、使ってもらうために、東北の事業者を担当するチームは、とにかく現地を訪れ、ヒアリングを行い、ひたすらニーズの掘り起こしを進めた。サポーター担当のチームは、応募者一人ひとりとビデオ会議で面談しプロフィールをまとめた。その数は、最初の 3 ヶ月で 100 名以上に上る。さらに、サポーターの層を厚くするために、企業団体にもアプローチし、サポーター確保のためのパートナーシップ構築に務めた。特に、初期段階はマッチングを丁寧に行うことで、参加した事業者、サポーター双方の負担を減らすために、一件一件、人の目を通して、お見合いのようにマッチングを行った。

  • Q11「お見合い」はうまくいきましたか

    事業者とサポーターの「お見合い」は Google ハングアウトを使ったビデオ会議で行ったが、 1 件目のお見合いはお互いに求めていることを引き出せずに不完全燃焼に終わった。そのため、残念ながら、マッチングもうまくいかなかった。この失敗から、ビデオ会議の進行ノウハウもゼロから作り上げていった。


    サポーターは「手伝ってあげたい」という気持ちが強く、事業者よりも先走ってしまいがちだったため、「まずは事業者の方の想いを聞く」「そこであなたが想いを共有できたら一緒にやりましょう」というスタンスを徹底した。

  • Q12具体的にどのようなマッチングが実現しましたか

    新商品の開発からブランディング、ネット販売や海外進出まで、マッチングした支援の内容は多岐にわたる。たとえば津波で流され店を失った宮城県のある寿司店は、ロゴやホームページ制作をイノベーション東北を活用して行った。アカモクという海藻を健康食品としてブランディングしたいと考えていた岩手県のある生産組合は、イノベーション東北で出会ったサポーターにパッケージやキャラクターをデザインしてもらった。いずれも無償だが、サポーターは自身のスキルや能力が東北復興に活かせることに価値を感じている。

  • Q13IT 企業である Google がアナログのお見合いマッチングとは驚きです

    IT の業界では、「Fail fast」というフレーズをよく使うが、これは早く失敗することを奨励している。たとえば、あるサービスを思いついたら、まずデモを作ってみることから始める。デモがあると、仲間から具体的なフィードバックをもらえるし、どこをどう改良すべきなのかも判断できる。もしくは、それがアイディア倒れで早く切り上げるべきものなのか、どこが落とし穴になりそうか、それはどう回避すればいいのかも、いち早く発見できる。 Google では、そうしたアプローチを大切にする文化があり、そのためのトライアンドエラーが奨励され、すぐフィードバックする習慣ができている。


    イノベーション東北のマッチングにおいては、どうマッチングすれば上手くいくのかを把握するために、初期はできるだけの多くの「お見合い」を実施することを目標とし、高めの数字目標を掲げて東北を回ったり、サポーターとの面談を展開した。

  • Q14どのように活動は社外へアウトプットしていきましたか

    製品の提供開始やアップデート、新しい取組みの開始時には報道機関への情報提供を行うとともに、ウェブサイト上では、マッチングの具体例が分かるように、事例紹介にページを割いた。また、オンラインでの活動がほとんどだったことから、直接、ユーザーと触れ合える場所を作ることを目的に、2014 年 3 月に六本木ヒルズで 1 週間、イベントや展示を実施。現場の声を東京に届けるために、毎晩、東北の事業者を招待したトークイベントも開催した。結果的にイノベーション東北への登録も急増した。

  • Q15プロジェクトの今後の課題は?

    Google の被災地との関わりは、パーソンファインダーを始めとするツールの提供から始まった。これは、我々のミッションである「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」ために、当時、必要とされた情報へのアクセスをインターネットで可能にすることを目指したが、イノベーション東北においては、ビジネスの復興に、インターネットの力をどう活かせるか、がチャレンジだった。イノベーション東北を通じ、 370 を超える行政や事業者、NPO 団体の方とご一緒させていただいた事で、地域活性化のためにインターネットがどう貢献できるのか、様々な知見を得ることができた。当初、想定していなかったことだが、この知見はより広い地域にスケール(拡大、活用)できると思っている。日本全国の地方創生の動きに応用することで、ご恩返しができればと考えている。

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